英国を語る上で外せない
普遍と革新。
阪急メンズ大阪1階の紳士靴売場「GMTコーナー」のセールスパーソンを担当する片岡元。今回、販売員としてのキャリア25年を誇る彼に、「GMT」社が展開する英国靴専門店「Lloyd Footwear」の魅力について語ってもらった。
「Lloyd Footwear」とは

1972年、英国の伝統的なアイテムを揃えた専門店として、代官山同潤会アパートで創業。まだ英国製の靴が日本であまり輸入されていない時代にノーザンプトンで日本人の足に合うオリジナルシューズを開発。以来約50年にわたり日本における英国靴のオピニオンリーダーとして、また靴を通して英国文化の魅力を伝える語り部として、英国靴を提案し続けるブランド。
「Lloyd Footwear」の魅力

一言でいえば、伝統的な英国靴を変えることなく守り抜いているところだと思います。頑なに変わらず、各モデル発売当初から同じ木型、同じ仕様で“伝統的な普遍のプロダクト”として作り続けています。もし20年後、同じ靴が欲しいとご用命いただいた場合でもお応えできるように、ラインアップを大きく変えることはありません。ここまで頑固で不器用なブランドは今時珍しいと思います。
他のブランドでは、時代に合わせた解釈やその意図を、木型のシェイプや仕様、デザインに反映させてリリースすることが多いですが、「Lloyd Footwear」は伝統に根ざしたものづくりを突き詰めています。時代ごとの解釈、またオーナーごとの解釈により何色にも染まることのできる振り幅の広い靴、着用するオーナーに価値観を委ねられた靴。デザインやスペックに特化しない、いわゆる記号化されない“普遍のプロダクト”だからこそ、そこに人それぞれの価値観を投影できると考えているからなんです。
伝統という“器”を突き詰めることで、オーナーとなる皆様に、英国クラシックの本質を楽しんでいただくこと、一方で器の“余白”を感じ取り、革靴を心地よい違和感としてカジュアルに楽しんでいただくこと。それは、さながらワークウェアやミリタリーアイテムのように、生み出された理由や機能といった本来の用途としての本質は継承されつつも、一方で現代ではファッションアイテムとしての一面も持ち合わせているといったように、オーナー自身に、どのように自身の価値観を投影するかを委ねているということです。普遍であるがゆえ、古きをたずねる楽しみなのか、はたまた新しい気付きへの喜びなのか、人それぞれの趣向で楽しんでいただけると思います。
英国の魅力

真面目さとその対極にある不良性ですね(笑)。伝統という“普遍の概念”を大切に守り続ける国民性であり、これが英国の魅力だと思います。しかしそんな真面目な国民性だからこそ、時にカウンターカルチャーと呼ばれる伝統を逆手にとったムーブメントが起こります。伝統は踏まえつつも相容れない部分、そこに熱を帯びた不良性が大きなうねりを生みだす、これは伝統という器の“余白”部分において、価値観のちょっとした違いや不和が増大し、大きなうねりになっていったのだと思います。こういった一面もまた英国の魅力のひとつであり、伝統を重んじているからこそ生まれるイノベーションです。
興味深いのは、そのカルチャーの中心には言葉に言い表せない“ムード”があったはずで、その抽象的で曖昧な、いわゆる“気分”といわれるものが何故か当事者たちには具体性を帯びて共有されていたということ。その“ムード”とはどんなものだったのか、自分はそれを音楽、ファッション、映画などから感じ取り、深掘りしていくことが楽しみですね。なによりそこには人それぞれの生き様とも呼べる、格好良い“スタイル”がありますから。
その“スタイル”について印象深いのは、Original Duffersと呼ばれる初期「The DUFFER of St. GEORGE」。DEAD STOCKやVINTAGEも扱うセレクトショップから始まった英国ブランドで、オリジナルメンバーの“気分”から生まれる“スタイル”がずば抜けて洒落ていました。そんな彼らの作り出した“ムード”は、JAZZの新たな解釈として英国アンダーグラウンドで産声をあげたACID JAZZと交わり、大きなうねりになっていくのです。ACID JAZZを掘っていくうちに彼らの存在を知り、写真で見た「Tricker’s」をワイドデニムに合わせた彼らのカテゴライズできないスタイルに激しく心を揺さぶられ、バイト代を握りしめて三宮高架下まで「Tricker’s」を探しにいったことを今でも覚えています。
変わらない伝統とそれに対する新しい解釈。そしてファッションと音楽のリンク。掘り下げれば掘り下げるほど英国文化はおもしろいですね。「自分のスタイルとは?」と考えた時、英国の重厚な伝統と突き抜けた革新性、その二面性に大きな影響を受けていることは間違いないです。

¥47,300

¥99,000