ビクター タケル

1998年生まれのビクター タケルさん。日本アートシーンの目利きも注目する、未知の才能を秘めた若きアーティストである。パリに生まれ育った生粋のパリジャンながら、フランスと日本の血を引いているからか、日常の中で多文化に触れ、コミックや音楽などモダンカルチャーのパワーにインスパイアされて独特の感性を育んできた。そこから生まれるポップで鮮やかな絵画の数々はどれも、カラフルな色使いとシンプルかつ大胆な構図が特徴的。21歳で東京に移住してからは、日本特有の文化にも魅了され、フランスと日本のカルチャーを融合させながら、さらに作品世界を掘り下げている。実物を目にすれば、旬な輝きを纏ったフレッシュなエネルギーが感じられることだろう。今季の阪急メンズは、ちょうど東京の表参道で個展を開催していたビクターさんを直撃。完成したばかりの新作が並ぶギャラリーでインタビューを行なった。話しを聞く中でわかったのは、誰もが羨むような甘いルックスに恵まれていながら、その外見を生かした話題作りは一切せず、絵を描くことに真摯に向き合っているということ。唯一にして最大の関心事が、絵を描くことなのだろう。レンズの向こうから、1点の曇りもない瞳で、まっすぐ前だけを見つめるタケルさんの姿が強く印象に残った。

Q:あなたの自身の夢はお持ちですか?
A:そうですね。小さい頃からずっと同じ夢を持っています。5、6歳の時には漫画家になりたかったんですけど、それがだんだん変わってきて、今はペインターを目指しています。でも結局、絵の世界についての夢は、ほぼ20年前からずっと持っています。

Q:その夢はどんな夢ですか?
A:今はペインターを100%目指しているんですけど、将来的には頑張って、いろんな良いギャラリーとかモダンアート美術館とかに作品を展示したいという気持ちはあるので、それが自分の夢ですね、今は。

Q:今、その夢はどんな状況ですか?
A:東京に住みはじめてからだんだん変わってきて、良い意味で絵に真面目に取り組むようになりましたし、東京に来て、ここには若いアーティストに対してのチャンスがフランスよりもあるなっていうのも感じて。なので、うまくいってますかね。それを続けて、その調子で頑張っている感じです。

Q:あなたにとって夢とは?
A:夢は、自分にしたらそれが毎日のガソリンみたいな感じで、その夢を持っているから毎日が意味がある、みたいな。自分の幸せとか自信とかが、全部その夢に入っているので。結局それがないと、なんか人生って意味があるのかな?みたいな感じですかね。

Q:絵を描くようになったきっかけは?
A:きっかけは特にないんですけど、3歳くらいかな、もうペンを持てるくらいの年齢からずっと絵を描いている記憶はあって。結局、今まで続けられたのが絵くらいなんですよ。スポーツも途中でやめたり、音楽も途中でやめて。でもなぜか、絵だけは今でも続けています。

Q:作品のインスピレーションはどこから?
A:毎日の生活とか、今までの思い出とかを考えながら描いているというか。ここに展示されている絵は、自分のセルフポートレートなんです。自分の昔の写真とか友達の写真とかを見ながら描いています。

Q:タケルさんにとって、作品は自己表現のためのもの?それともメッセージを伝えるためのもの?
A:自分のためにも描いているし、人のためというか、いろんなエモーションを人にもシェアしたいという気持ちもありますね。まずは自分のためなんだけど、人が自分の絵を見てこう感じたとか、そういうことを伝えたかったんだね、っていうフィードバックが来るとすごく嬉しいので、やっぱり(自分のためと人のための割合が)6:4くらいですかね。

Q:絵で挫折した経験は?
A:ありますね。やっぱり好きなことをやっていると、それは必ず出てくることだと思います。好きだからこそ、パーフェクトではなくても、そこを目指したいっていう気持ちはあるじゃないですか。僕は結局、まず自分のために描いているので、そこは自分との戦い。もっと上手くなりたいと思っています。でも、今の時代はSNSもあるから、嫌でも人と比べてしまう。この人、僕より若いのに、もうこんなことやってる!とか。そういうのはできるだけ見ないようにしているんですけど、挫折は毎日ですね。で、乗り越えるためには、やっぱり描くしかない。じゃないと、前に進まないので。でも、ずっと描き続けるだけでもダメっていうか。たまにちょっと散歩とか他のことをすれば、マインドは変わってくる気がします。

Q:一番幸せを感じる瞬間は?
A:作品が完成した時!描き終わって満足した時の、あの嬉しさ、ですね。

Q:絵を描いてきて、一番嬉しかったことは?
A:やっぱり、知らない人から「感動した」とか「綺麗な作品を描いていますね」と言われるのが一番嬉しいですね!家族とか友達は僕のことをよく知っているので、大体「良いね」とか言うんですけど、簡単に(笑)。その点、知らない人から聞くと、言葉のインパクトが違います。

Q:これまでに「夢が叶った!」と思えた瞬間は?
A:まだないですね。ないっていうか、例えば日本に住みたいっていう気持ちはあったけど、それは夢っていうより目的だし。目的と夢はちょっと違っていて、夢の中にいろんな目的があるんだと思う。だから、夢が叶ったと思ったことはまだないけど、目的というか、夢に到達するためのステップはひとつずつ超えているなという実感はあります。

Q:日本に来てから、作風は変化しましたか?
A:変わってきましたね。今、25歳なんですけど、やっぱりいろんなことを試して、自分のスタイルを見つけるっていうのはすごく難しい。今はまだそれを完全に見つけたと言えるところまでは来てないですけど、だんだんそこに近づいてきてるなっていう感覚はあります。それが日本に来たからなのかどうかはわからないですけど。

Q:今、ハマっていることは?
A:絵以外だと、音楽を聴くのがすごい好きだし、あとは格闘技を見るのも好きです。UFCっていうアメリカのリーグがあるんですけど、それを毎週必ず見ています。自分でも格闘技をやりたいとは思っているんですけど、やっぱり絵に集中したいので……。自分は時間の使い方がちょっと苦手で、いろんなことができないタイプ。1つのものにフォーカスすると、それしかできなくなっちゃうんです。やりたいって思ってても実際はやってないので、本当にやりたいのかな?っていう感じはありますけどね。

Q:今の展覧会が終わったら、やってみたいことは?
A:今回は展示できなかった、もっと大きい絵を描きたいとか、油絵のテクニックをもうちょっと磨いて、いろんなことにトライしてみたいなという感じ。結局、絵のことになりますね。

Q:今、行ってみたい場所は?
A:フランス育ちなのに、イタリアに行ったことがなくて。それがちょっと残念なので、イタリアに行きたいですね。いろんな美術館にも行きたいし、雰囲気だけでも感じたいですね、イタリアの。あとはニューヨーク!それもひとつの夢っていうか、ニューヨークで自分の作品を展示したいっていう目的はあります。30歳になる前には行きたいですね。

Q:作品を通じて、日本の皆さんに伝えたいことは?
A:日本にもいろんなアーティストがいると思うんですけど、きっと日本では自分みたいな作品を描いている人はあまりいないと思うので、そういう自分の絵を、たくさんの日本の方に見てほしいなと思います。

Q:最後に一言お願いします!
A:これからも頑張って、東京からいろんなところに行きたいです。頑張るので、よろしくお願いします!