第一ニット
明治時代に見附の機屋に糸を卸す糸問屋から始まり、一度途絶えたものの昭和に合繊輸入の会社として再建、その後ニットを売る部門・糸を売る部門・糸を作る部門の3部門を携えた会社としてスタートした「第一ニット」。営業一部部長の伊藤さんは「ハイテクとローテクの融合こそが第一ニットの真骨頂なんです」と、教えてくれました。
例えば、リブと身頃をひとつの機械で縫いあげる会社がほとんどの中、「第一ニット」ではそれぞれに特化した機械を導入し、別々に編んだリブと身頃を組み合わせています。その一方で、リンキングやボタン付け、アイロンなどは手作業で行うことも多く、伝統的な手仕事に新しい技術を取り入れながらクオリティーの高い製品を作り続けています。
「私たちが目指すのは、時代を超えて何年先も着続けられるニットなんです」
こう語るのは、シーズン毎に捨てるものではなく、愛着の湧くものを作りたいという想いがあるから。今回ご紹介する“30/70”はその代名詞的なアイテム。「第一ニット」が得意とするハイゲージニットで、天然素材ならではの触り心地とたしかな技術が詰まっています。
また、見附市のものづくりに興味を持ってもらうための取り組みも。インターンシップの受け入れや一般の方向けの工場見学の実施が、その一環です。先ほど登場した“30/70”もそんな活動の中で生まれました。「第一ニット」は物を作る・売るということを生業としていましたが、発信力が課題でした。そこで2018年に『JETRO(日本貿易振興機構)』から紹介を受けた、ファッションディレクターの干場さんとブランディングを開始。2020秋冬から、オンラインストアのみの販売で、黒一色という商品構成をスタートさせました。最初は半信半疑だったそうですが、いざ始めてみると干場さんのInstagramでの宣伝効果もあり、初日から好調で、勢いそのままに現在に至っているそうです。
伊藤さんは言います、「新潟がニットの産地として知られていない、日本でニットを作っていることが知られていないというのが現状です。少しでも多くの方に日本製の優れた商品がまだあるんだと感じてほしいんです」。そこには、新潟・見附で生産をつづける誇りと日本製であるこだわりがありました。
匠の夢
次に訪れたのは、見附市でファクトリーブランドとして活動しながら、生地の生産を行う「匠の夢」。分業制を取り入れる機屋が多い中で、糸の染色・糊付工程以降の織物になるまでの工程を一貫して生産しています。時代が移り変わる中で、今の「匠の夢」の強みはジャカード。洋服はもちろん、インテリアアイテムなど、日々の暮らしに寄り添うアイテムを手掛けています。最近ではジャガード織機で、お客様が撮られた写真を織物にするという取り組みも。
「見附の地場産業である織物を絶やさず、後世に残すという想いは常にあります。」
と語るのは、チーフマネージャーである太田さん。そのために、新たな試みは欠かせません。クラフトビールショップやパン屋さんなどの地元企業とのコラボ商品を販売したり、見附市の米寿のお祝い品として3年連続で風呂敷を作ったりと、挑戦を続けています。
豊かな緑、美しい水に恵まれた見附。そこには自分たちのものづくりへのプライドと、良いものを届けたいという熱い想いを胸に秘めた作り手たちが。これを機に、見附のものづくりに注目してもらえればと思います。