食で体を整える韓国の伝統と
日本をはじめ様々な食文化をミックスし、
美しく健やかな食の世界を追求する
李映林さんとコウ静子さん。
真っ白な空間に韓国のヴィンテージ家具が
映えるセンスあふれるアトリエから、
素材への感謝を込めた
春の食の楽しみをご紹介します。
今回ご紹介したお料理や、数種類のお茶とお菓子を楽しめるスペシャルイベントを2日間限定で開催。ぜひ、お申込みの上、ご参加ください。※内容や食材は誌面とは異なる場合がございます。
五味五色のカラフルな食卓
「韓国では“薬食同源”と言って、毎日の食事で心と体を整える考えが生活に溶け込んでいます。」と映林さん。薬膳師の資格も持つ静子さん曰く、「陰陽五行説の“五味五色”を食事で取り入れる習慣もあって、韓国の食事の色はカラフルなんです!五色を意識すると栄養バランスも自然と整います。」五色は体の五臓にも対応していて、四季によって摂るといい食材の色も違うとか。春は肝の季節で、緑色の食材を摂るのがおすすめ。冬の間に眠った味覚を、菜の花やぜんまいなど旬の山菜のほろ苦さと香りで目覚めさせるそう。まさにその山菜を楽しめるのがナムル。「韓国ではすべての野菜がナムルになるんです。」と映林さん。ナムルは、素材を生かしてそれぞれ味つけは最小限に、キムパの具材やピビンパなどほかの料理にも使えるマルチな存在。とくに山菜が豊富な春はナムルが楽しい季節です。
お茶の時間で気持ちをリセット
おふたりが大切にしているのが、心も体もほぐしてくれるお茶の時間。「気持ちが落ち着かない時こそ、丁寧にお茶を煎れて飲むことで自分と向き合えて心を整えてくれる。次に向かうリセットになるんです。」という静子さんがオリジナルで作ったのが“花籠茶”。「韓国では茶葉でなく、お花や木の実・根などを使った“茶外茶”がおもに親しまれているんですが、この“花籠茶”は季節の花や実をブレンドすることで、香りや味わいが一層華やかになるんです。」また、花と一緒に摘んだ枝をお茶のお道具や黒文字代わりに使う美意識と遊び心も彼女ならでは。季節や自然を大切にする想いがお茶時間をより豊かにしてくれます。

ほのかな苦みと香りがおいしい
山菜&春野菜のナムル
「食材ごとに味も変えて、素材そのもののおいしさを引き出しました。盛り付ける時は空気を入れるようにふんわりやさしく、色のバランスも大事ですね。」(映林さん)

彩りも食感も楽しいピビンパ
「ピビンパの具材はナムルに赤貝を足して彩りや食感を楽しくしています。私の故郷の済州島はみかん作りが盛んで、柑橘は洗練された味になるので料理にもよく使っています。わさびとすだち果汁のジャン(たれ)で爽やかに仕上げました。」(映林さん)

桜鯛と山菜&春野菜のしゃぶしゃぶ
「桜鯛の頭と昆布で取っただしのしゃぶしゃぶは、黒酢と醤油、唐辛子にわさびが入ったジャン(たれ)をつけると、桜鯛のやさしいおいしさが際立ちます。旬の山菜と春野菜も一緒にお楽しみください。」(静子さん)
桜鯛の昆布〆と日向夏のカルパッチョ
「日向夏は白い部分もおいしいからあえて残して、菜の花とディルで春らしく仕上げました。レモンをギュッと絞って酸味をアクセントに。」(静子さん)
苦みと辛みがクセになる菜の花キムチ
「菜の花の苦みと唐辛子の辛みで食が進みますね。キムチを作る時は、韓国産の唐辛子を使うことがおいしく仕上がるコツです。」(映林さん)

いちごとあやめかぶの水キムチ
「デザートみたいにかわいいですが、漬け汁ごといただく水キムチです。昆布だしにもち粉を入れて沸騰させ、塩やにんにくなどで味つけます。発酵するとシュワシュワ食感になるんです。」(静子さん)

彩りも香りも楽しい“花籠茶”
「季節ごとにお茶を作っていると、自分なりのお茶の暦ができるんですが、今は木蓮が季節のお花です。つぼみのうちに花びらを開いて乾かすことで、香りも立って、キレイに仕上がります。お湯を入れると花がパッと広がるのもうれしいですよね。」(静子さん)

気持ちを高めてくれるお道具
「お道具を集める楽しみもお茶時間には大切ですよね。陶芸家の市川孝さんに作っていただいた炉やお気に入りのお道具でお茶を淹れる時間も楽しくて。味わいもまた格別です。」(静子さん)
- 李映林さん
- 料理研究家。韓国・済州島出身。持って生まれた鋭い味覚とセンスで伝統的な韓国料理はもちろん、和洋を取り入れた新しい味を探求しながら、日本と韓国の食文化の架け橋として日々活躍している。
- コウ静子さん
- 料理家。国際中医薬膳師。母である李映林さんの薬膳の思想や韓医学を日々の食卓に、花や薬草をお茶やお菓子に取り入れ、季節の息遣いを感じながら暮らすことの大切さを伝えている。