先代が築いた木工所で修業し、木地業に留まらず造形・デザイン・漆器監修を行うなど、暮らしにとけ込む新たな輪島漆器の在り方を提案してきた「輪島キリモト」七代目 桐本泰一さん。漆芸の文化を守り、輪島全体の復興に向けて精力的に動くなど、妻 順子さんと二人三脚で活動を続けています。そこから感じるのは、桐本さんのひたむきな想いです。
出店者:
「輪島キリモト」漆器
暮らしを気持ちよく、便利に。
想いが込められた漆器たち
木と漆がいまの暮らしにとけ込む物作り。「輪島キリモト」が大切にしているコンセプトです。「毎日使うものだから、いまの暮らしにあったうつわを届けたい」と話す桐本泰一さん。輪島の漆器は、地元の珪藻土で作る“輪島地の粉”を下地に使うことが特徴で、これに蒔地(まきじ)・千すじなど独自の技法を組み合わせることで金属製のカトラリーの使用も可能に。シンプルなデザインが多いのも、「幅広く日常使いができるように」と考えられたものです。また漆器は傷んだ際も“直す”ことができるため、長く愛用できることも魅力。桐本さんは言います。「私は輪島が大好き。だから輪島を盛り上げるためにも、多くの人に地元の漆器のよさを知っていただき、身近に感じてほしいと思っています」。
なければ作ればいい。
職人に大切なのは作り続けること
その「輪島キリモト」に想像すらできなかったことが起こりました。工房建物は無事でしたが、作業場所の確保すらままならない状況。しかし決して諦めなかったのが桐本さん。「思いついたらすぐに、前向きにやる」というスタイル。場所がなければ作ればいいと、世界的に知られる建築家 坂茂さんと連携。坂茂さんが手掛ける紙管(しかん)を柱にした平屋建ての仮設工房をすぐに導入し、職人たちがより効率よく働ける場所を作り出しました。「自分にできることを考え、すぐに動きました。なぜなら、働けないなら輪島を離れ、職人も辞めると話す人も出てきたからです」。「職人というのは一度辞めてしまうと、もう遅い。少しずつ働ける場ができれば、きっと職人の気持ちも変わるはず。物を作り続けることが、私たちにとって大切なんです」。
力を合わせて、前進する。
そして美しい輪島を取り戻す
また桐本さんは、輪島であり、漆器の灯を再びともすため、新たな構想を描いています。それは“輪島の漆芸職人と協力して新しい仕事を見つける”という取り組みです。「所属やのれんは違います。しかし輪島の漆器として見れば全員がひとつ。違いを気にかけている場合ではない」と言い、「職人が手を止めると連綿と続いてきた文化が終わってしまうから、とにかく前進し続ける」と言い切ります。そしてこの積極的な動きには、反響も生まれています。妻 順子さんのもとには“「輪島キリモト」の漆器は生活の一部。直してこれからも使い続けます”といったうれしい声が届くだけではなく、SNSでもファンが応援メッセージを発信してくれるように。順子さんはこう言います。「私たちの気持ちをみなさんが慮ってくださる。だから、落ち込んでばかりいられません。輪島にとって産業がなくなるのが一番の痛手。それを絶やさず、美しい輪島の景色を取り戻したいです」。
直すことで生まれる新しい価値。
大好きな輪島のために
輪島の漆芸職人がこれまで通りの暮らしを取り戻すには、まだ時間が必要かもしれません。しかし桐本さんは「当事者は私たち。だからいろいろなことを考え、きっかけを自分たちで作るから、それをサポートしていただければ」と話します。輪島塗の漆器は傷んでも“直す”ことができる魅力があります。それはまさに“輪島のいま”と重なっています。代々、輪島の漆器に真摯に向き合い、“直す”ことの意味を知っているからこそ、自らのルーツである輪島のために今日も桐本さんは動き続けています。
最後に桐本さんが今回の出店について話してくれました。「食祭テラスには、製造を再開してから完成した普段使いの漆器や木製品、被災して雨漏りした倉庫から救出された特別な漆器、また「輪島キリモト」店内で落下して傷付いた部分に漆絵や金継ぎを施して直した新しい漆器など、いまご用意できる様ざまな商品を出品する予定です。大阪でみなさまにお会いできるのが本当に楽しみです」。
“にっぽん食むすび”のリコメンド
“暮らしに寄りそう漆器”を作り続けている「輪島キリモト」。シンプルな形ながら、持つと不思議と掌に落ち着き、口に当てると唇にフィット。使う楽しみのある漆器です。少しずつできることから作業を再開されている工房から素敵な漆器が届きますので輪島の伝統を手に取って体感してみてほしいです。
特 別 企 画
約30年前の器に命を吹き込む!
よみがえる“うるし”シリーズ受注会
1990年頃から中塗り済みで保管されていた器が震災後に救出され、「輪島キリモト」に運び込まれました。塗師 小路貴穂さんが新しい漆塗りを施し商品化するプロジェクトが始動します。
今回は「そ/s/KAWAHIGASHI」店主、カリナリーディレクターの中東篤志さんがセレクトした新表現の漆器限定セットの受注会を開催します。
また全壊した桐本さんご自宅の近隣家屋から救出した御膳、お椀揃いを使った中東さんの一汁三菜が楽しめるコーナーも登場します。どうぞご期待ください!
【事前予約制】
「そ/s/KAWAHIGASHI」中東篤志さん一汁三菜企画
次代の担い手たちも登場!
「わじま工迎参道」
“もっと輪島の街を楽しんでほしい”という想いで、輪島の4工房が協力し、2017年に立ち上げた「わじま工迎参道」。今回はこちらの特設ブースも登場します。木地師や塗師、若手創り手を中心に、自らの感性と新しい表現を具現化した作品たちにご注目ください!
「輪島キリモト」
住所:石川県輪島市杉平町大百苅70-5
@wajimakirimoto
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