簡単でおいしいチョコレートを作りたいけど......なんだか少しザラザラする?失敗したかも?と感じたことはありませんか?そこで大切なのが「テンパリング」という工程です。この記事ではテンパリングとは何か、その目的や温度調整の方法などを紹介します。

チョコレートのテンパリングとは?

ボウルに入った液体チョコレートとヘラ

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テンパリング(別名「焼き戻し」)とは、チョコレート内のカカオバターを分解するために、温度を調節する工程のことです。熱を加えて溶かすことで、チョコレート内の不揃いな「結晶状態」が均一になります。

このテンパリングの工程をおこなうことで、ツヤ感のある口溶け滑らかなチョコレートができあがります。

チョコレートをテンパリングする意味・必要性は?

固形チョコレートの粒が複数と、バラの飾り

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チョコレートをテンパリングする意味は4つあります。

<チョコレートをテンパリングする意味>

1.チョコレートを固める
2.密度を高める
3.光沢感を出す
4美味しさをアップさせる

チョコレートには溶ける温度である「融点」と、固まる温度である「凝固点」があります。これらのバランスが崩れると、チョコレートの口当たりが悪くなります。

融点が低すぎると密度も低く、型から外しづらい状態になります。一方で、融点が高すぎると結晶が粗く、ザラッとした舌触りとなってしまいます。

これはいずれも、チョコレートの原料であるカカオバターの性質によるものです。テンパリングをおこなうことで、バター結晶の粒を「V型」と呼ばれる均等なサイズ・配置にし、チョコレート特有の風味を最大限引き出すことができます。

ですからテンパリングは「口溶け滑らかなおいしいチョコ」「ツヤ感・光沢感のあるチョコ」を作るのに必要な工程といえます。

チョコレートをテンパリングしないとどうなる?

表面が白い粉っぽいチョコレート

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テンパリングをせずに冷やし固めただけのチョコは、結晶構造が不安定となり、口の中で一気に溶け切りません。これにより口溶けが悪くなってしまいます。

また、チョコレートに含まれるカカオバターが不安定なままとなり、保管中にオイルブルームが生じることも。

オイルブルームとは、チョコレートの表面に白い粉や膜、筋などが浮き出てしまう現象のこと。風味の劣化の一種です。カビとは違って食べても問題はありません。

しかし劣化であるため、ぼそぼそとした食感となり、旨味の低下、光沢感・ツヤのない、口溶けの悪いチョコになってしまいます。

オイルブルームを防ぎ、口溶けの良いチョコにするために、テンパリングの工程は欠かせません。

チョコレートの種類によってテンパリングの温度が異なる

左からミルクチョコ、ビターチョコ、スイートチョコ

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テンパリングに最適な温度は、チョコレートの種類によっても異なります。

これはミルクチョコやホワイトチョコに含まれている「乳脂」によって、溶解温度にズレが生じるためです。一般的なスイートチョコレートは、カカオバターの油脂が使われています。

カカオバターの油脂よりも「乳脂」のほうが、融点が低くなっており、これらを多く含む、ミルクやホワイトチョコを溶かす温度も低くなります。

ミルクやホワイトチョコを高温で溶かしてしまうと、粉乳と砂糖が同時に固まり、食感が悪くなるので失敗する恐れがあるため、チョコの種類に応じてテンパリングの温度を変えるようにしましょう。

各種チョコレートの温度の目安

「各種チョコレートの温度の目安の表」	スイート	ホワイト	ミルク 溶かす温度	 50~55℃  45~50℃	 40~45℃  下げる温度	27~29℃	26~28℃	26~27℃ 保温温度	 31~32℃  29~30℃	28~29℃

※製品により若干異なります。

簡単!失敗しないチョコレートのテンパリング手順3ステップ

テーブルに置かれた、チョコレートの粒とカカオ

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前項で解説した「チョコレートの温度」を元に、テンパリングの手順を紹介します。以下のポイントを押さえつつ、おいしいチョコレートを作りましょう!

ステップ1.チョコレートを細かく刻んで湯煎する

まな板の上にある、刻まれたチョコレート

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まずはチョコレートを細かく刻み、50℃前後の湯煎にかけます。ゆっくりと混ぜながら溶かし、液状になるまで続けましょう。

チョコレートの温度は、40℃を保ちます。温度計などの器具を使用し、正確な温度を把握することで、こまめに状態を確認します。

このときチョコレートに、湯気や水蒸気が入らないように注意しましょう。チョコレートは繊細なため、水気が入ると粘土が高くなり、テンパリングが失敗してしまいます。

簡単な対策として、湯煎の量を多くしすぎずに湯気を最小限に抑える、などがあります。湯煎が冷めてしまった場合は、お湯をこまめに入れ替えると良いでしょう。

ステップ2.冷水につけてチョコレートの温度を下げる

チョコレートの固まり具合をチェックするシェフの手元

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次に、チョコレートの入ったボウルを「冷水」または「氷水」につけます。チョコレートが入っている量より冷水が上になると、ボウルの水滴により、水気の原因となるので、注意しましょう。

一度チョコレートを冷やすことで、結晶の成長を早めて、均一に並べ替えられます。

このとき冷水に触れている部分から、チョコレートが固まっていくため、しっかりゴムベラで混ぜましょう。混ぜつつも、空気や気泡が入らないよう配慮します。

およそ26~27℃になるまで、チョコレートの温度を下げます。(ブラック=27~28℃、ホワイト=25℃ほどが目安)

ステップ3.再び湯せんにかけて一定の温度まであげる

ボウルから湯気が出ている様子

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一度冷やしたチョコレートを、再び湯煎にかけます。このひと手間により、安定した結晶(V型)を再構築できます。

このとき1度目とは異なり、ボウルにわずかにつけたあと、お湯から離して混ぜるのがポイントです。お湯に長時間つけないようにしましょう。

チョコレートの温度が上昇しすぎると、安定した結晶(V型)まで溶かしてしまい、テンパリング失敗の原因となります。(この場合は、再び1からテンパリングします。)

温度計で状態を確認することを忘れずに。この作業をなんどか繰り返し、徐々にチョコレートの温度を上げていきます。引き続き、水気にもご注意ください。

およそ30℃まで温まったら、その状態をキープします。(ブラック=31℃、ホワイト=28℃)

テンパリングに失敗してもやり直すことで元どおりになる

ボウルに入った液状チョコレートと、泡立て器

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テンパリングは少しコツのいる工程です。水気防止や適度な混ぜ具合・細かな温度管理など多くのことに気を配らなければなりません。そのため、理論通りにやっても失敗してしまうこともあるでしょう。

テンパリング失敗によるチョコレートへの影響としては、以下の通りです。

<テンパリング失敗によるチョコレートへの影響>

・必要以上に結晶が増えすぎて口溶けが悪くなる
・ファットブルームの発生により表面が白っぽくなる

しかし万が一、テンパリングに失敗してしまっても、やり直しが利くためご安心ください。1から手順を踏めば元通りになります。

テンパリングの失敗を防ぐためには「水分を入れない」「温度管理」「均一な撹拌(混ぜ方)」の3つがポイントになります。

チョコレートはデリケートな食材です。水気を飛ばすために電子レンジを使用したり、室内の空調・エアコンに直接当たらないように配慮したりする、など細かい部分にも気を配りながら作ってみてください。

テンパリングで、極上のチョコレートを楽しもう!

おいしいチョコレートには、必要不可欠であるテンパリング。何気なくやっているお菓子作りを、化学理論の観点からみてみると不思議な発見がありますね。ぜひご家庭でも、ワンラック上の良質なチョコレート作りに挑戦してみてください!

※商品情報や販売状況は2023年01月11日時点でのものです。
現在の情報と異なる場合がございますが、ご了承ください。