スイーツ&グルメ2023/3/8 更新

約500年続く「とらや」。職人が語る、餡へのこだわりとは【あのブランドが愛される理由 vol.3】

ブランドの想いや商品の魅力をご紹介する、HANKYU FOODオリジナルの連載企画です。今回は、「とらや」を取材しました。

約500年続く「とらや」は、日本の和菓子文化を語る上でも欠かせない存在です。なかでも代表的商品と言えるのが、小倉羊羹「夜の梅」や黒砂糖入羊羹「おもかげ」、そして伝統の味を手軽なかたちで楽しめる「小形羊羹」。長きにわたって支持されるそのおいしさの裏には、どんなこだわりがあるのでしょうか。

「とらや」について

「とらや」は、室町時代後期に京都で創業しました。後陽成天皇の在位中(15861611年)から、御所の御用を勤めています。そして1869年の東京遷都に伴い、京都の店はそのままに東京にも進出。

以降、全国の主要都市を中心に販売店や喫茶を展開しています。1980年にはフランス・パリにも出店し、現地の文化に寄り添いながら和菓子を提案。現在に至るまで、羊羹や和菓子の魅力を国内外で広く伝えています。

教えてくれたのはこの方

今回お話を伺ったのは、入社15年目の職人・岡本雅史さん。入社時から京都や御殿場の工場で餡づくりに携わり、現在は羊羹づくりに従事されています。

左:小形羊羹、右:竹皮包羊羹

岡本さん:初めて「とらや」の小形羊羹を食べたとき、「こんなおいしい羊羹があるんだ!」と驚き、感動しました。そこから私の「とらや」人生が始まりました。私の働く京都工場では、「夜の梅」や「新緑」などの代表的な羊羹から、「はちみつ」「紅茶」といったさまざまな味の小形羊羹、季節ごとの生菓子などをつくっています。

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※上記URLで「生菓子」をご注文の場合、商品の受け取りは「阪急うめだ本店」になります。

人気商品へのこだわりその1・原材料を厳選し、素材本来の味わいを活かす

岡本さん:羊羹の主な原材料は、小豆・寒天・砂糖ととてもシンプルです。素材本来の持ち味を活かすため、原材料には妥協せず、厳選したものを使用しています。たとえば餡には、風味・色艶に優れている北海道十勝産のエリモショウズという小豆を使用。白餡には、群馬県で契約栽培されている「とらや」で申請して品種登録された白小豆「福とら白」を使用しています。寒天は「とらや」の商品の基準に合う硬さ、粘りに調整していただいています。

通年販売している小形羊羹。右から、「夜の梅」、「新緑」、「はちみつ」、「紅茶」、「おもかげ」

岡本さん:原材料は天然素材のため、その年々で品質・状態が若干異なります。小豆で言えば、前年のものと比べたときに、色や粒の大きさに違いが見られることがあります。寒天やはちみつも天然素材のため、仕入れごとに若干の違いが見られます。素材の状態を見て、製造工程で細かく調整を行い、いつもと同じおいしさに仕上げられるように工夫しています。

人気商品へのこだわりその2・煉り具合の見極めは必ず職人が行う

岡本さん:「とらや」の羊羹は、職人の手仕事と機械の両方によって完成します。羊羹を煉る作業は、安定性と持続性が求められるため機械で行いますが、羊羹の煉り具合の見極めなど要となる部分は必ず職人が確認し、手作業で行います。具体的には、エンマ(「とらや」では木ベラのことをこう呼んでいます)を使って、羊羹の重みや垂れ具合、粘り具合を職人の目と感覚で判断します。

定番商品の竹皮包羊羹。左手前が「夜の梅」、右奥が「新緑」

岡本さん:羊羹づくりは、小豆を煮る作業から完成までに3日を要します。小豆を煮て、羊羹専用の餡をつくり、その餡に煮溶かした寒天と砂糖を加えて煉りあげ、羊羹を固めていきます。

天然素材を使っているため、仕上がりを一定に保つためには職人の経験や繊細な感覚が欠かせません。私も日々、感覚を磨きながら経験を積んでいます。そのため、目指したおいしさに仕上がったときは本当にうれしく、やりがいを感じます。

人気商品へのこだわりその3・色々な楽しみ方、アレンジができる

岡本さん:羊羹は日本茶や抹茶を合わせるイメージがあると思いますが、紅茶やコーヒー、シャンパンやウイスキーとも意外に合いますよ。また、サンドイッチ用の食パンにクリームチーズを塗ってごく薄くスライスした羊羹をはさんだ羊羹サンドイッチや、羊羹をダイスカットして無糖のココアパウダーをまぶして生チョコのような食感を楽しむのもおすすめです。

※「虎屋菓寮 京都一条店」ではコーヒーのご提供は行っておりません。

皆さまへのメッセージ

虎屋菓寮 京都一条店。店内席のほか、庭を眺められるテラス席がある。

岡本さん:小形羊羹には、京都限定の「白味噌」「黒豆黄粉」や期間限定の味もあるので、機会があればぜひ味わっていただきたいです。これからも、お客様に「おいしい」とおっしゃっていただけるように責任を持ってつくり続けていきます。

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◎阪急百貨店公式オンラインストア HANKYU FOOD
◎阪急うめだ本店、神戸阪急、博多阪急

写真 | 木下 誠
文 | 鈴木 里映

※商品情報や販売状況は2023年03月08日時点でのものです。
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