ライフスタイル&ヘルス2025/5/25 更新
「行事食」と聞いて、皆さんはどんな料理を思い浮かべますか。この記事では、年中行事を季節ごとに分け、代表的な行事食について意味や由来をわかりやすく解説します。行事食を楽しむことは、四季の移ろいや日本の文化を身近に感じるきっかけにもなりますよ。
行事食とは、季節の伝統行事や特別な行事、お祝いの際に食べられる料理のことです。たとえば、お正月の「おせち料理」をはじめ、ひな祭りの「はまぐりのお吸い物」、十五夜の「月見団子」などが広く知られています。
行事食には、季節を感じられる旬の食材や縁起のよい食べ物が多く用いられるのも特徴です。また、「行事食」とひと口に言っても、全国的に親しまれている定番の料理や食べ物がある一方で、地域ごとに受け継がれてきた独自の行事食があるのも魅力といえます。
春には「ひな祭り」や「春のお彼岸」「端午の節句」などの行事がおこなわれます。新芽が芽吹き、花々が咲き始める季節の行事食には、春野菜や旬の魚介、縁起のよい食材がふんだんに使われ、春の訪れを食を通して感じることができます。
3月3日のひな祭りは桃の節句とも呼ばれ、女の子の健やかな成長と幸せを願ってお祝いをする日です。ひな人形や桃の花を飾り、家族や親戚が集まってお祝いをするのが一般的。
ひな祭りの行事食といえば、「はまぐりのお吸い物」が定番です。春に旬を迎えるはまぐりは、対になる貝殻しかぴったり合わないことから夫婦円満の象徴であり、女の子が良縁に恵まれるようにとの願いが込められています。
また、華やかな「ちらし寿司」もひな祭りには欠かせません。女の子の幸せな人生を祈る思いが具材に込められているのも特徴的。たとえば、えびは長寿を、れんこんは見通しのよさを、そして豆は健康でマメに働けるようにという意味合いがあります。
ほかにも、春の生命力を象徴する「ひし餅」、一年を通して女の子の健やかな成長を願う「ひなあられ」、そして厄を祓う意味をもつ「白酒」などもひな祭りを彩る行事食です。
・はまぐりのお吸い物
・ちらし寿司
・ひし餅
・ひなあられ
・白酒
春のお彼岸とは、春分の日を中日(ちゅうにち)とし、前後3日間を合わせた7日間のことです。春分の日は例年3月20日または21日頃にあたり、たとえば3月20日が春分の日の場合、春のお彼岸は3月17日から23日までとなります。
お彼岸は仏教における大切な行事で、春と秋の年2回おこなわれます。お彼岸はこの世である此岸(しがん)とあの世である彼岸(ひがん)がもっとも近づく時期と考えられ、ご先祖様を供養するためにお墓参りをしたり、法要に参加したりするのが習わしです。
春のお彼岸には、お餅をこし餡で包んだ「ぼた餅」が行事食として親しまれています。ぼた餅の名は春に咲く牡丹の花にちなんだもの。お餅には五穀豊穣への祈りが込められ、餡の材料の小豆には魔除けの力があると信じられています。
・ぼた餅
5月5日の端午(たんご)の節句は、男の子の誕生を祝い、健やかな成長を願う日です。五月人形やこいのぼりを飾り、菖蒲湯に入る風習があります。
行事食としては、かしわの葉で餡入りのお餅を包んだ「かしわ餅」が定番。かしわの葉は新しい芽が育つまで古い葉が落ちないことから、子孫繁栄を願う縁起物として知られます。
関西地方では、かしわ餅より、笹の葉でもち米や葛生地などを包んだ白くて甘い和菓子「ちまき」が主流です。よもぎを使った「草餅」も行事食として親しまれており、草餅やちまきには邪気祓いの意味合いがあります。
また、旬の「たけのこ」や「かつお」を使った料理も端午の節句の行事食です。たけのこにはまっすぐ元気に育ってほしいという意味があり、かつおは「勝男(かつお)」との語呂合わせから、強くたくましく育ってほしいとの願いが込められています。
・かしわ餅
・ちまき
・草餅
・たけのこを使った料理
・かつおを使った料理
夏には「土用の丑の日」をはじめ、「七夕」や「お盆」などの行事がおこなわれます。日差しが強く、厳しい暑さが続く夏を元気に乗り切るため、行事食には旬の食材はもちろんのこと、夏バテ予防や疲労回復に適した食材が用いられるのが特徴です。
土用とは、立春・立夏・立秋・立冬の直前約18日間のことをいいます。丑の日とは、日にちを十二支で数えたときの丑に該当する日のこと。土用の丑の日とは、土用の期間内の丑の日という意味です。
季節の変わり目である土用は体調を崩しやすい時期でもあり、古くから丑の日には「う」の付く食べ物を食べ、無病息災を願う習わしがありました。なかでも「うなぎ」を食べる習慣が定着したのは江戸時代。スタミナ食であるうなぎは、いまや夏を代表する行事食です。
ほかにも、夏に旬を迎える「瓜(うり)」、疲労回復が期待できる「梅干し」、食欲が落ちたときでも食べやすい「うどん」などを食べる習慣もあります。
・うなぎ
・瓜
・梅干し
・うどん
7月7日の七夕は、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句と同様、季節の節目を表わす五節句のひとつです。七夕は、7月7日に織姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)が天の川を渡り、一年に一度だけ出会えるという伝説に由来しています。
七夕といえば、願い事を書いた短冊を竹の枝に飾るのが夏の風物詩。各地で七夕祭りが開催され、色とりどりの吹き流しや短冊、折り鶴などの七夕飾りが街を彩ります。
七夕の行事食といえば「そうめん」が代表的。七夕にそうめんを食べる由来については、そうめんを織姫が織る糸に見立てた説、天の川をイメージした説など諸説あります。なにより、涼しげな見た目やのど越しのよさは暑い夏にぴったりといえるでしょう。
・そうめん
お盆はご先祖様の霊を家に迎えて供養をし、再びあの世へと送り出す仏教行事です。ろうそくや提灯を灯してお供え物をしたり、お墓参りに行ったりするのが一般的。
お盆の行事食としては、一般的にご先祖様へのお供え物と同じものを家族でいただくのが慣習です。お盆ならではの行事食として知られるのが「精進料理」。仏教の教えに基づき、肉や魚、卵を使わず、野菜や海藻、豆類などを中心とした料理です。
「白玉団子」もお供え物の定番。ご先祖様をお迎えする際は長旅の疲れを癒してもらうため甘味を加えたものを、お見送りの際はお土産用にプレーンな団子をお供えします。
日持ちのする和菓子の「落雁(らくがん)」、魔除けの力があると信じられてきた小豆を使った「おはぎ」などもお供え物の定番です。「そうめん」をお供えする風習もあり、ご先祖様の乗り物に結び付ける綱に見立てたという説をはじめ、由来には諸説あります。
・精進料理
・白玉団子
・落雁
・おはぎ
・そうめん
秋には「重陽の節句」や「秋のお彼岸」「十五夜」などの行事がおこなわれます。多くの作物が実りを迎えるこの季節は、気候も穏やかで、食欲も増す時期。行事食には栗や里芋をはじめとする秋の味覚が取り入れられ、旬の恵みを楽しめます。
9月9日は、五節句のひとつ「重陽(ちょうよう)の節句」です。この時期に花を咲かせる菊にちなみ「菊の節句」とも呼ばれ、菊の花を鑑賞したり、菊酒を飲んだりして、無病息災や不老長寿を願う風習があります。
「重陽」の陽とは奇数という意味。もっとも大きな陽数「9」が重なる9月9日は特に縁起がよい反面、災いも招きやすいとも考えられ、邪気を祓う行事としての意味合いもあります。
重陽の節句の行事食には、食用菊が多く用いられるのが特徴です。「菊酒」は菊の花を日本酒に漬け込んだり、花びらを浮かべたりしたもので、厄除けや長寿の願いが込められています。「菊の花を使った料理」としては、おひたしやお吸い物などが定番です。
また、秋の味覚である「栗ごはん」や「なすを使った料理」も重陽の節句には欠かせない行事食として親しまれています。
・菊酒
・菊の花を使った料理
・栗ごはん
・なすを使った料理
秋のお彼岸とは、秋分の日を中日とし、前後3日間を合わせた7日間のことです。秋分の日は例年9月22日または23日頃にあたり、たとえば9月23日が秋分の日の場合、秋のお彼岸は9月20日から26日までとなります。
春のお彼岸と同様に、秋のお彼岸もご先祖様を供養するための大切な仏教行事です。行事食としては、春にはこし餡で餅を包んだ「ぼた餅」が定番であるのに対し、秋にはつぶ餡で餅を包んだ「おはぎ」が定着しています。
「おはぎ」という名は、秋に咲く萩の花に見立てて名付けられたもの。使用される小豆の赤色には古くから魔除けの力があると信じられており、秋に収穫される小豆は皮がやわらかく、皮ごと使えるため、つぶ餡として用いられるのが特徴です。
・おはぎ
十五夜とは、月を愛で、秋の実りに感謝するお月見の行事です。月見団子や里芋、栗などをお供えし、稲穂に見立てたススキを飾ってお月見をする風習は秋の風物詩となっています。
十五夜とは旧暦の8月15日のこと。秋の真ん中の「中秋(ちゅうしゅう)」にあたることから、「中秋の名月」とも呼ばれます。現在の暦では毎年日付が変わり、9月中旬から10月上旬頃です。
行事食の代表格といえるのが「月見団子」。江戸時代に、豊かな収穫への感謝を込めて米粉で作った団子を供えたのが始まりです。満月をイメージした丸い団子は縁起がよく、お供えのあとにいただくことで幸福を呼び込むと考えられてきました。
また、秋の恵みである「栗や里芋を使った料理」や卵を月に見立てた「月見うどん」「月見そば」なども行事食として知られています。
・月見団子
・栗を使った料理
・里芋を使った料理
・月見うどん
・月見そば
冬には「冬至」や「大晦日」「お正月」「節分」など、季節や一年の節目にちなんださまざまな行事がおこなわれます。寒さが一段と厳しくなるこの季節、行事食には体を温める食材や縁起物の食材が多く使われ、昔から受け継がれてきた知恵が息づいています。
冬至(とうじ)とは、一年でもっとも日照時間が短くなる日のことで、例年12月21日前後です。この日を境に日が少しずつ長くなっていくことから、冬至は「運気が上昇する縁起のよい日」として古くから大切にされてきました。
冬至には「ゆず湯」に入る習慣があります。「冬至の日にゆず湯に入ると風邪をひかない」という言い伝えもあり、香り高いゆず湯に浸かることは冬ならではの楽しみです。ゆずの強い香りで邪気を祓い、運気上昇を前に体を清めるという意味合いがあります。
冬至の行事食としては、なんきん(かぼちゃ)、れんこん、にんじん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うんどん(うどん)の「冬至の七種(ななくさ)」が有名です。「ん」が2つ付く食材を用いることで、多くの運気を呼び込めると考えられてきました。
また、邪気を祓う目的で「冬至粥」と呼ばれる小豆粥を食べる風習もあります。
・冬至の七種(かぼちゃ、れんこん、にんじん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うどん)
・冬至粥(小豆粥)
大晦日(おおみそか)は一年の最後の日、12月31日を指します。もともと、晦日とは三十日という意味で、特に年末最後の晦日を「大晦日」と呼ぶようになりました。
大晦日は新しい年神様(としがみさま)を迎えるために準備を整え、寝ないで待つ日と考えられてきました。「大晦日の夜のことを除夜(じょや)」と呼び、神社で厄祓いの神事がおこなわれたり、お寺では除夜の鐘を鳴らしたり、さまざまな年越行事がおこなわれます。
大晦日の行事食といえば「年越しそば」が定番。なぜ大晦日にそばを食べるのかについては諸説あります。そばが細くて長いことから幸せや健康が長く続くことを願うためという説や、そばは切れやすいことから一年の苦労や厄災を断ち切るためといった説が有力です。
・年越しそば
正月は年神様(としがみさま)を家にお迎えし、一年の幸せと健康を祈る行事です。正月の「正」は「年の初め」を意味し、本来は一年の最初の月を指しますが、現在では三が日(1月1日から3日)や松の内(1月7日または15日まで)を指すのが一般的です。
正月の代表的な行事食である「おせち」は、もともとその年の豊作を祈って年神様に供える供物料理でした。めでたさを重ねる意味を込めて重箱に詰められ、縁起のよい食材が多く使われるのが特徴です。
たとえば、数の子には子孫繁栄、栗きんとんには金運上昇、昆布巻きには不老長寿、黒豆にはマメに働き元気に過ごせるようにとの願いが込められています。
また、「お雑煮」も正月の食卓に欠かせない料理のひとつ。地域によって餅の形や具材、味付けも違い、多様なバリエーションがあるのも魅力です。さらに、邪気を祓い、不老長寿を願う目的で「お屠蘇(とそ)」と呼ばれる薬酒を飲む習慣もあります。
・おせち
・お雑煮
・お屠蘇
節分とは、災厄や邪気を祓い、1年の無病息災を願う行事です。例年2月3日前後ですが、春分の日の前日と定められており、その年の立春の日付によって節分の日も変動します。
もともと「節分」とは季節の変わり目を意味し、立春だけでなく、立夏・立秋・立冬の前日も含まれていました。旧暦では立春が一年の始まりであり、特に重要視されたことから、いつしか節分といえば立春の前日を指すようになったのです。
節分では、「鬼は外、福は内」の掛け声とともに豆まきをおこなうのが恒例です。鬼は病や災いの象徴とされ、炒った大豆をまいて鬼を追い払い、その豆を食べることで力を得ると信じられてきました。この炒った大豆は「福豆」と呼ばれ、節分の行事食のひとつです。
七福神にちなみ、7種の具材を巻いた「恵方巻」を食べる習慣も定着しており、その年の恵方を向き、願い事をしながら無言で丸かぶりをするのが恒例となっています。
体を温める「けんちん汁」も節分の行事食として知られ、地域によっては、邪気祓いや健康を祈願して「いわしを使った料理」を食べる風習もあります。
・福豆
・恵方巻
・けんちん汁
・いわしを使った料理
行事食には伝統や先人たちの知恵が息づいており、季節の彩りも豊かです。これまで何気なく味わっていた料理も、意味や由来を知ることで、その奥深さに気づかされるのではないでしょうか。行事に合わせて育まれた四季折々の行事食をどうぞお楽しみください。
※商品情報や販売状況は2025年05月25日時点でのものです。
現在の情報と異なる場合がございますが、ご了承ください。
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