見た目はウイスキーに似ていて、原料や産地はワインに似ている、ちょっぴり不思議なお酒「ブランデー」。芳醇な香りとまろやかな味わいが魅力の、世界中で人気のお酒です。この記事では、ブランデーとはどんなお酒なのか、ウイスキーとの違いから製造方法まで詳しく解説。奥深いブランデーの世界を覗いてみませんか?

ブランデーとは

グラスに入ったコニャックの周りに白ぶどうが置かれている

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ブランデーは、果物を原料とする蒸溜酒(じょうりゅうしゅ)の総称です。もっとも代表的な原料はぶどうで、ブランデーといえばぶどうを原料にしたものを指すのが一般的。そのほか、りんご、さくらんぼ、洋梨、ベリー類などさまざまな果物が使われ、これらは基本的に「フルーツブランデー」と呼ばれます。

また原料や生産地、製造方法によっても細かく分類されているのが特徴。「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」は世界的にも知られているブランデーの種類です(コニャックやアルマニャックはぶどうが原料ですが、カルヴァドスはりんごを原料とするブランデーです)。

蒸留酒とは

そもそも「蒸留酒」とは何かご存じですか?お酒は製造方法によって、「醸造酒(じょうぞうしゅ)」「蒸留酒」「混成酒(こんせいしゅ)」の3つに大別されます。

・醸造酒......原料を酵母でアルコール発酵させて造るお酒。代表的なお酒はビール、日本酒、ワイン
・蒸留酒......醸造酒を加熱し、蒸留して造るお酒。代表的なお酒はブランデー、ウイスキー
・混成酒......醸造酒や蒸留酒を原料に、果実や香辛料などを配合したお酒。代表的なお酒は梅酒、リキュール

つまり製造方法で見ると、ブランデーはウイスキーの仲間なのです。では一体ブランデーとウイスキーにはどのような違いがあるのでしょうか?

ウイスキーとブランデーの違い

ウイスキーが入ったグラスが2つ並んでおり、ひとつはウイスキーを注いでいる

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ブランデーとウイスキーは同じ蒸留酒に分類されますが、香りや味わいは大きく異なります。同じように醸造酒でも、ビールとワインはまったくの別物ですよね。その理由は、原料が異なるから。ブランデーはぶどうをはじめとする果物が使われますが、ウイスキーは麦やトウモロコシなどの穀物が使われるのです。

ブランデーとワインの深い関係

同じ蒸留酒であることから、ウイスキーと比較されることが多いブランデー。実はワインとも深いつながりを持っています。前述したように、ブランデーは主にぶどうを原料にして造られるお酒。同じくぶどうを原料とするお酒といえばワインですよね。

ここで思い出してほしいのが、「蒸留酒=醸造酒を蒸留して造るお酒」であること。つまり、ワインを蒸留したものがブランデーになるのです。そのため、ブランデーとワインの名産地はほぼ一致しています。

ブランデーのおすすめの飲み方

木のテーブルにグラスに入ったブランデーが2個並んでいる

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ブランデーはアルコール度数が高いため、ビールのようにゴクゴクと飲むのではなく、香りを楽しみながらゆっくりと飲むのが基本です。

定番の飲み方は、ストレートやロック。強いお酒が苦手な方には、水割りやソーダ割りなどの飲み方も人気があります。なかでもコニャックのソーダ割りは「フレンチハイボール」と呼ばれ、ブランデー好きの間でじわじわと人気が高まっているんですよ。

ブランデーの製造方法

木の樽の周りに、グラスに入ったコニャックや瓶が置かれている

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ぶどうを原料とするブランデーの場合、大まかな製造方法は以下の通りです。

1. ぶどうを収穫する
2. 収穫したぶどうを圧搾して発酵させ、ワインにする
3. 発酵を終えたワインを蒸留する
4. 蒸留を終えたもの(これを「ヌーベル」と呼ぶ)を、樽に入れて熟成させる

原料のぶどうには、酸味の強い「ユニ・ブラン」という品種が多く使われます。三大ブランデーのひとつであるコニャックも、そのほとんどにユニ・ブランが使われているんですよ。酸味が強いと蒸留しても香りを保ちやすいという特徴があり、これを活かして芳醇で複雑な味わいのブランデーが造られているのです。

ブランデーの起源と歴史

ブランデーが最初に文献に登場したのは13世紀中頃。医者で錬金術師のアルノー・ド・ヴィルヌーヴという男が、ワインを蒸溜したものを「不死の霊薬」として売り出したのが始まりとされています。当時この液体は「命の水」と呼ばれており、まだブランデーという名前ではありませんでした。

ブランデーの名前の由来

ブランデーと呼ばれるようになったのは近世の頃。フランス語で「焼いたワイン」を意味する「ヴァン・ブリュレ(vin brule)」を、オランダの商人が「ブランデウァイン(Brandewijn)」(オランダ語で同じく「焼いたワイン」の意味)という名前で輸出し、それがイギリスで省略されて「ブランデー(Brandy)」になったとされています。

ちなみにフランスでは「ブランデー」ではなく、"命の水"を意味する「オー・ド・ヴィー(Eau- de-vie)」という名前で呼ぶのが一般的です。

ブランデーの種類と生産地

フランスの田園風景。一面に広がるぶどう畑

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ブランデーは世界各国で造られていますが、産地としてもっとも有名なのがフランスです。世界的にも知られているブランデーの「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」も、それぞれフランスで造られているもの。以下ではブランデーの種類や、それぞれの特徴についてご紹介します。

コニャック

コニャックは、フランスのコニャック地方で作られているブランデーです。生産地はもちろん、使用するぶどうの品種や製造方法、アルコール度数などに厳しい規定があり、この規定をクリアしたもののみが「コニャック」と名乗ることができます。単式蒸留を2回おこなって造られるため、雑味のない上品な味わいを楽しめるのが特徴です。

アルマニャック

アルマニャックは、フランス南西部のアルマニャック地方で造られるブランデーのこと。コニャックと同じく厳格な規定があり、それをクリアしたもののみが「アルマニャック」と名乗ることができます。コニャックとの大きな違いは製造方法。アルマニャックは半連続蒸溜機を用いて1回の蒸留で造られます。蒸留回数が少ないため、コニャックと比べてワイルドで野生的な味わいを楽しめるのが特徴です。

カルヴァドス

カルヴァドスはフランスのノルマンディー地方で造られている、りんごを原料とするブランデーです。コニャックやアルマニャックと同様に「カルヴァドス」と名乗るには規定があり、この地域以外で造られたりんごのブランデーは「フルーツブランデー」や「アップルブランデー」と呼ばれます。

カルヴァドスは、ワインではなくりんごの発泡酒である「シードル」を蒸留して造られるのが特徴。フルーティーで甘味があるため、そのまま飲むほか、お菓子の材料としてもよく使われています。

ブランデーで大人な時間を満喫しよう

ワインやビールと比べて、ハードルが高いと思われがちなブランデー。名前は聞いたことがあっても、一体どんなお酒なのか詳しく知らなかった方は多いのではないでしょうか。原料や生産地によっていろいろな個性があるのがブランデーの魅力です。あなたもぜひ、その味を体験してみてください。

※商品情報や販売状況は2022年03月13日時点でのものです。
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