ライフスタイル&ヘルス2022/9/29 更新
節分の日の食べ物と聞いて、けんちん汁よりも恵方巻きを思い浮かべる方が大半ではないでしょうか。実は、節分の日にけんちん汁を食べる風習が、今も一部地域に根付いています。恵方巻きのお供にもぴったりなけんちん汁。節分に食べる意味や発祥の歴史について解説します。
けんちん汁といえば、野菜をたっぷり食べられる人気の汁物です。日常的に食卓にも登場するおなじみの料理ですが、節分に食べることにはどんな意味があるのでしょうか。自分が住んでいる地域で食べる習慣がないという方も、この機会にぜひチェックしてください。
簡単に作れる基本のけんちん汁のレシピや、けんちん汁以外の節分の食べ物についてもご紹介します。
節分にけんちん汁を食べる風習があるというのは、少し意外かもしれません。どんな地域で食べられ、どんな意味があるのでしょうか。そんな疑問にお答えします。
けんちん汁は、大根やにんじんなどの根菜、こんにゃく、くずした豆腐を油で炒め、しょうゆで味付けする汁物。年間を通して食べられますが、体を芯から温めてくれることから、特に寒い時期には好まれます。節分にけんちん汁を食べるのは、主に関東地域です。
もともと、けんちん汁は「えびす講」や「初午(はつうま)」といった季節行事で振る舞われていました。えびす講は七福神のひとりであるえびす様をお祀りする行事で、初午は2月の最初の午の日におこなわれる稲荷神社のお祭りです。
ともに寒い時期の行事であることから、けんちん汁は体を温めることを目的に供され、同じく寒い時期におこなわれる節分の食べ物としても定着しました。
けんちん汁の「けんちん」は聞き慣れない言葉ですが、どういう意味があるのでしょう。この言葉には、けんちん汁の発祥と密接な関係があります。けんちん汁の発祥には諸説ありますが、ここでは有力な2つの説をご紹介します。
建長寺は神奈川県鎌倉市にある禅宗の寺院で、臨済宗建長寺派の大本山。けんちん汁は修行僧の食事である精進料理から生まれたという説です。
建長寺の初代住職が野菜くずも無駄なく使って作った汁物が「建長寺汁」と呼ばれ、いつしか「けんちん汁」に転じたといわれます。あるとき、修行僧が落とした豆腐を拾い集めて洗い、鍋に入れたことをきっかけに、豆腐を手でちぎって入れるようになったという逸話も。
建長寺のけんちん汁の歴史は700年以上前にさかのぼり、今でも節分会にはけんちん汁が振る舞われます。「建長寺といえばけんちん汁」というくらい有名なのです。建長寺で修業した僧侶が日本各地に散らばるとともに、けんちん汁も全国に広まったと考えられています。
中国の精進料理である普茶(ふちゃ)料理のひとつ、巻繊(けんちゃん)が変化して、けんちん汁と呼ばれるようになったという説です。
普茶とは、広く大衆に茶を供するという意味。普茶料理は江戸時代初期、京都の宇治に黄檗山萬福寺を開いた隠元(いんげん)禅師が中国より伝えたとされる精進料理です。布教の際に、普茶料理も広めたといわれます。
巻繊とは千切りにした材料を巻いたものを指し、大根やごぼう、豆腐などを細切りにして油で炒め、湯葉や薄焼き卵で巻いて揚げたり蒸したりする料理です。巻繊の具材である野菜や豆腐で作った汁物が、けんちん汁の由来になったとのいわれがあります。
大根、にんじん、ごぼうなどの根菜と、豆腐や油揚げなどで作る、基本のけんちん汁の作り方をご紹介します。ごま油の風味がアクセントとなり、具だくさんで食べ応えも抜群。野菜の旨味がたっぷり詰まったアツアツのスープで、心も体もポカポカになりますよ。
・木綿豆腐......1/2丁(150g)
・大根......100g
・にんじん......1/4本(50g)
・ごぼう......1/3本(50g)
・こんにゃく......1/2枚(100g)
・長ねぎ......1/2本(50g)
・油揚げ......1/2枚
・ごま油......大さじ1杯
・だし汁......600cc(だしの素:小さじ1と1/3杯、水600cc)
a. 酒......大さじ1杯
a. みりん......小さじ1杯
a. 塩......小さじ1/3杯
a. 薄口しょうゆ ......大さじ1杯
・豆腐はキッチンペーパーに包んで、水気をよく切る
・大根とにんじんは、皮をむいて5mm幅のいちょう切りにする
・ごぼうはささがきにして水にさらす
・長ねぎは1cm幅の斜め切りにする
・油揚げは熱湯をかけて油抜きをし、1cm幅の短冊切りにする
1. こんにゃくを手でちぎって沸騰したお湯に入れ、約2分下ゆでしてからザルにあげて水気を切る
2. 鍋にごま油をひいて中火で熱し、大根、にんじん、ごぼう、こんにゃくを炒める
3. 木綿豆腐を手でちぎりながら加え、サッと炒める
4. だし汁を加え、沸騰したらアクを取り、フタをして弱火で約10分煮る
5. 長ねぎ、油揚げ、(a)の調味料を加えて、弱火で5分ほど煮れば完成
こんにゃくや豆腐を手でちぎることで表面にでこぼこができ、味が染み込みやすく、汁とも絡まりやすくなります。お好みで里芋やしいたけなどを加えると、ボリュームも食感もアップしますよ。
節分には、けんちん汁以外にも縁起物の料理があります。由来や意味を知ると、節分をより楽しめるようになりますよ。
節分の食べ物としてポピュラーなのが恵方巻き。もともとは関西が発祥で、節分を祝い、商売繁盛を願って食されていました。今では、その年の恵方に向かって願いごとを思い描きながら無言で恵方巻き食べるスタイルが広く浸透しています。
1本まるごと食べるのは、一気に食べないと運を逃してしまうから。無言で食べるのは、途中で話をするとせっかくの福が逃げてしまうという理由からです。
節分に、焼いたいわしの頭にヒイラギの枝を指したものを玄関に飾る地域があることをご存じですか。鬼が嫌ういわしの匂いで邪気を追い払い、尖ったヒイラギで鬼の眼を刺すという、魔除けと厄払いの意味がある風習です。
いわしを食べる地域もあり、そうすることで体の中から邪気を追い払えると考えられています。
福茶とは、その名の通り、福を招くお茶のこと。湯飲みに福豆(炒った大豆)、梅干し、昆布を入れ、お茶を注いだものです。豆は「まめに働く」、梅は「邪気払い」や「長寿」、昆布には「喜ぶ」といった縁起のよい意味が込められています。
平安時代、空也上人が都で流行していた疫病平癒のために、万民に施したお茶が福茶の由来。村上天皇が万病を避けるため飲んだことから「皇服茶(おうぶくちゃ)」と呼ばれ、皇服茶が転じて「大福茶」となり、新年や節分にも飲まれるようになりました。
しもつかれは、2月の初午の日に栃木県や茨城県など北関東で食べられる料理。正月の残りの塩鮭の頭、節分の残りの豆、鬼おろしでおろした大根やにんじん、油揚げ、酒粕を煮込んで作られます。
魔除けや厄除け、無病息災など縁起のよい意味があることから、節分の食べ物として定着したといわれます。
節分そばは、まさに節分の日に食べるそばのこと。旧暦では立春が一年の始まりの日とされ、その前日である節分に清めのそばを食べる風習がありました。この風習は今も一部地域に定着しています。
細く長いそばのように、新たな年の健康長寿や家運長命を願って食べられていますよ。
立春に向けて一年の邪気を払い、新しい年の無病息災を願うのが節分です。節分の食べ物は地域によってさまざまで、数々の伝承・由来があります。今度の節分には、恵方巻きと一緒にけんちん汁も食卓に並べてみませんか。寒さの厳しい時期だからこそ、けんちん汁のおいしさが身に染みるはずですよ。
※商品情報や販売状況は2022年09月29日時点でのものです。
現在の情報と異なる場合がございますが、ご了承ください。
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