ライフスタイル&ヘルス2022/12/23 更新
お彼岸が近づくと、スーパーの店頭や和菓子屋などでおはぎを目にするようになります。おはぎはお彼岸のお供え物の定番ですが、なぜお彼岸におはぎをお供えするのかご存知でしょうか。この記事ではお彼岸とおはぎの関係や、おはぎとぼたもちの違いなどについて解説します。
春と秋の年2回あるお彼岸には、墓参りをしたり法要をおこなったりと、ご先祖様と向き合う人が多いのではないでしょうか。まずは、お彼岸とは何かを解説します。
日本古来の慣習として根付いているお彼岸の語源は、仏教用語です。仏教では、私たちがいる煩悩に満ちた現世を「此岸(しがん)」、悟りの境地であるあの世の世界を「彼岸(ひがん)」と呼びます。此岸と彼岸の間には川が流れているとされており、この川がいわゆる「三途の川(さんずのかわ)」なのです。
仏教において、お彼岸はこの世とあの世、つまり此岸と彼岸がもっとも近くなる期間とされています。お彼岸にご先祖様をしのび供養することで、極楽浄土へ近づけると信じられていたのです。お彼岸に墓参りや法要をおこなうのは、その風習の名残といえます。
お彼岸のお供え物の定番といえば、お餅をあんこで包んだおはぎを思い浮かべる人が多いでしょう。おはぎをお彼岸にお供えするのは、あんこの材料である小豆に魔除けや不老長寿の願いが込められているため、という説が有力です。
中国では古くから、赤色には邪気をはらう力があるとされており、日本でも赤色には特別な力があると考えられてきました。そのため赤色をした小豆は縁起がよい食べ物とされ、お彼岸にあんこを使ったお餅がお供えされるようになったのです。
おはぎと似た食べ物に、ぼたもちがあります。どちらもお彼岸にお供えする食べ物ですが、ぼたもちは春のお彼岸に、おはぎは秋のお彼岸にお供えするという違いがあります。
春のお彼岸にお供えするぼたもちの由来になっているのは、春の花である牡丹です。秋のお彼岸のお供え物であるおはぎの名前は、秋の七草のひとつでもある萩の花にちなんでいます。このようにお彼岸の季節に美しく咲く花になぞらえたものをお供えして、ご先祖様を供養しているのです。
おはぎとぼたもちの違いは名前の由来だけでなく、作り方にも見られます。粘りと弾力がある食感が特徴のもち米と、一般的に食事に用いられているうるち米とを混ぜ合わせて炊き、粒感が残る程度について丸めて餅を作る点は、おはぎとぼたもちで共通です。大きな違いは、餅を包むあんこにあります。おはぎはつぶあんで餅を包みますが、ぼたもちはこしあんを用いるのです。
小豆の収穫時期は秋であるため、秋のお彼岸にお供えされるおはぎは、収穫したばかりの小豆を使います。新鮮な小豆は皮がやわらかく、炊くと皮ごと食べられるので、おはぎのあんこは皮が残っているつぶあんなのです。
一方、春のお彼岸のぼたもちに使う小豆は収穫から時間が経ち、乾燥して皮が固くなっています。つぶあんにすると皮が口に残って食べづらいため、ぼたもちは皮を取り除いたこしあんを使うのです。
さらに、おはぎとぼたもちは形にも違いが見られます。大輪の花を咲かせる牡丹に似せて、ぼたもちは丸く大きく作るのが一般的です。それに対しておはぎは、細長い花びらを持つ萩の花をイメージして俵形に作ります。
お彼岸は春と秋の年2回あり、春は3月の春分の日、秋は9月の秋分の日を中心とした前後3日間、合計7日間がお彼岸とされています。春分の日と秋分の日は、1948年に公布された「国民の祝日に関する法律」によって定められた国民の祝日のひとつです。春分の日と秋分の日の日付は年によって変わりますが、それは天文学にもとづいて決められています。
春分の日と秋分の日は、昼と夜の時間の長さが同じになる日とされており、この両日の太陽は真東から昇って真西に沈みます。地球から見ると太陽が昇ったり沈んだりしているように見えますが、実際は地球が太陽のまわりを公転しているのです。
地球が太陽のまわりを1周する期間がぴったり365日であれば、春分の日と秋分の日の日付がずれることはありません。しかし実際は365日よりも数時間長いため、春分の日と秋分の日は年によって日付が変わってしまうのです。
ただしこのずれはうるう年によってリセットされるので、春分の日は毎年3月20日ごろ、秋分の日は毎年9月23日ごろになります。お彼岸の時期も、春分の日と秋分の日の日付によって年ごとに変わるので、毎年気をつけておく必要があるでしょう。
「国民の祝日に関する法律」によると、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」祝日、秋分の日は「祖先を敬い、亡くなった人々をしのぶ」祝日と定義されています。したがって3月にある春のお彼岸は、春の到来を喜び、生命の繁栄を願う意味があります。一方、9月にある秋のお彼岸は、ご先祖様を敬い供養する行事なのです。
おはぎやぼたもち以外にも、お彼岸で定番とされているお供え物があります。ここからはお彼岸のお供え物によく用いられるものと、その意味を紹介します。
仏前には花が欠かせませんが、お彼岸にお供えする花は「美しいものを捧げて、ご先祖様をお飾りする」「花を供えて、命のはかなさや尊さを知る」「心を清め、穏やかにする」などの理由があるとされています。お供えする花の種類については、特に決まりはありません。キクやユリ、季節の花がよく用いられますが、故人が好きだった花もよいでしょう。
地域によっては、「彼岸入り」と呼ばれるお彼岸の初日に「入り団子」を、「彼岸明け」となるお彼岸最終日に「明け団子」をお供えします。これらはお彼岸団子と呼ばれ、ご先祖様への感謝や敬意を表す意味があるといわれています。
なお、お供えした食べ物はその日のうちに下げて、食べてしまってもよいとされています。お供え物を食べる行為は、ご先祖様と食事を分け合うことになり、供養のひとつとみなされるためです。
仏教の教えに基づいて、殺生を避けるために肉や魚を使わず、野菜・穀類・豆類・海藻類などを使って作られる料理を精進料理と呼びます。中国から仏教の伝来とともに伝わり、日本での仏教の浸透と同時に人々に定着した料理です。お彼岸は仏教がもとになった慣習であるため、肉や魚をお供えすることを避け、精進料理をお供えするのがよいとされています。
前述のとおり、小豆は魔除けや不老長寿の願いが込められた縁起のよい食べ物です。その小豆を使った小豆めしは、小豆を煮て色がついた煮汁で米を炊いて作ります。赤飯とよく似ていますが、違いは米の種類です。赤飯はもち米を使って蒸して作るため、もちもちと食べごたえのある食感に仕上がります。しかし小豆めしはうるち米を使うため、さっぱりとした口当たりのご飯になるのが特徴です。
お彼岸に欠かせないお供え物であるおはぎには、ご先祖様を敬い、供養する気持ちが込められています。お彼岸は、ご先祖様との距離がもっとも近くなるといわれている期間です。普段は忙しくてご先祖様と向き合う時間が取れない人も、お彼岸にはおはぎをお供えして、故人をしのんでみてはいかがでしょうか。
※商品情報や販売状況は2022年12月23日時点でのものです。
現在の情報と異なる場合がございますが、ご了承ください。
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