ワインのラベルによく書かれている「ドメーヌ」の文字。ほかにもシャトーやメゾン、ネゴシアンという言葉も見かけます。これらはワイン生産者を指す言葉ですが、違いをご存知でしょうか?この記事ではドメーヌをはじめとして、シャトーやメゾン、ネゴシアンといった言葉について解説します。

ドメーヌとは

白ブドウの木の列を持つフランスのブドウ畑。

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ドメーヌとは、自らブドウの栽培、醸造、熟成、瓶詰めまでをおこなう、フランス・ブルゴーニュ地方の生産者のことです。

「ドメーヌ」という言葉は、フランス語で「所有地、区画、領域」を意味します。ブルゴーニュ地方の生産者は自分の畑を所有していますが、ほかの地方や他国の生産者に比べて敷地が狭く小規模です。わずかな土地でブドウを栽培しており、ひとつの畑に数十人の所有者がいることも少なくありません。

ドメーヌの特徴

土地の細分化

ドメーヌの生産者が細かく分割された土地を所有しているのは、フランスの歴史が影響しています。

かつてブルゴーニュ地方の畑のほとんどは、教会や王侯貴族が所有していました。フランス革命後、その土地は政府が没収して民間に売却されましたが、民間の人々は畑を丸ごと購入できる資金がありませんでした。そのため、畑を分割して購入したのです。

さらにナポレオン法典により、親の財産は子供全員へ均等に相続することが義務付けられ、畑がより細分化されることになりました。このような歴史が、現在のドメーヌに見られる土地の特色につながっているのです。

ひとつの畑を複数の生産者が所有するため、同じ畑で栽培されたブドウから作られたワインでも、生産者が異なると味わいが変わります。ドメーヌによる味の違いを楽しむことは、ブルゴーニュワインの醍醐味のひとつです。

小規模経営

ドメーヌは家族で経営されることが多く、畑だけでなく醸造設備も小規模です。必然的にワインの生産量が少なくなることも、ドメーヌの特徴といえます。

生産規模が小さいドメーヌでは、生産者自らの手でブドウを育ててワインを醸造し、瓶詰めまでを一貫しておこないます。そのため、よりよいワインを消費者へ届けたいという作り手の熱い思いや、ワイン作りに対する思想が強く反映された、個性的なワインが作られるのです。

ドメーヌもののワインは生産量が少ないことも相まって、希少性が高まり、値段が高くなる傾向があります。人気のドメーヌが作るワインは価格が跳ね上がり、入手困難になることも珍しくありません。

ドメーヌとシャトーの違い

ブドウの実が実った広大なブドウ畑

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フランスワインでよく聞かれる言葉に、「シャトー」があります。

シャトーと先ほど解説したドメーヌは、基本的に同じ意味を表す言葉です。シャトーの生産者もドメーヌ同様、自らブドウの栽培から醸造、熟成、瓶詰めまでをおこなっています。ただしドメーヌがブルゴーニュ地方の生産者を示すのに対し、シャトーが示しているのは主にボルドー地方の生産者です。

ブルゴーニュ地方のドメーヌは小規模で、細分化された畑を所有していることが特徴です。一方、ボルドーではひとつの大きな畑をひとつのシャトーが所有しています。「シャトー」には、フランス語で「城、大邸宅」といった意味があります。その名の通り、シャトーは広大な畑や大規模な醸造設備を所有している生産者なのです。

メゾンとネゴシアンについて

日没時にブドウ畑で赤ワインで乾杯をする人

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ドメーヌとシャトーについて理解したところで、ワインの生産者についてさらに知識を深めましょう。フランスワインにおいて、「メゾン」と「ネゴシアン」という生産者の存在も忘れてはいけません。

メゾンとは

主にシャンパーニュ地方のワイン生産者を示す「メゾン」。メゾンには、ネゴシアン・マニピュラン(NM)、レコルタン・マニピュラン(RM)、コーポレート・マニピュラン(CM)という、3種類の製造形態があります。

3種類の製造形態とその特徴

ネゴシアン・マニピュランとは、原料ブドウを栽培農家から買い取り、シャンパーニュを醸造する生産形態のこと。大規模でワインを製造できるので、毎年安定した品質で手頃な価格のワインが販売できる点がメリットです。

レコルタン・マニュピランは、ブドウの栽培からワイン作りまでを一貫しておこなう生産形態です。製造におけるすべての工程に携われるため、個性豊かな味わいになることがメリット。しかし生産量が少ない分、販売価格も高くなってしまう点がデメリットです。

コーポレート・マニピュランとは、ブドウの栽培農家が協同組合を作り、組合でワインを生産する形態のこと。日本で購入できるシャンパーニュの多くがNMですが、近年はRMCMからも流通量を増やしています。

ネゴシアンとは

ネゴシアンは、畑を所有せずにブドウや果汁、ワインを買い付けて、醸造・熟成・瓶詰め・販売をおこなう生産者を示します。フランス語で「卸売商人」を意味する言葉のため、自社ではブドウを作らず、買い付けた原料を加工販売する、生産者でありながら仲介業者のような働きもしています

ネゴシアンの特徴

ネゴシアンは規模が大きいので、大量のワインを生産できることがメリット。多くの場合、ブドウの品質は天候や病気、害虫などの影響により年ごとに差が出ます。しかしネゴシアンであればブドウの品質があまりよくない年でも、ほかの地方から質のよいものを買い付けてブレンドできるため、ワインの品質が保てます。

ボルドー地方のネゴシアンの特徴

ただしこれはブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方で見られる形態であり、ボルドー地方のネゴシアンはより強く仲介業者的に機能しています。ボルドー地方のネゴシアンは生産者と流通業者の間に入り、瓶詰めされてラベルまで貼られたワインをシャトーから買い付けて売り渡す、純粋な仲買人なのです。

【まとめ】ドメーヌの特徴やほかの用語との違い

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日本のドメーヌについて

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ブルゴーニュだけではなく日本にも、所有する畑で栽培したブドウから一貫してワイン作りを手掛けるドメーヌがあります。数ある日本のドメーヌのなかから、この記事では3つを紹介します。

ドメーヌタカヒコ

2010年に北海道余市町登地区に設立された「ドメーヌタカヒコ」。国内に多くの熱狂的なファンを持つ、日本を代表するドメーヌです。北海道のなかでも比較的温暖で降水量が少なく、ブドウ栽培に適した気候に恵まれた同地区で、一貫してピノ・ノワールのみを栽培しています。

高い人気を博す「ナナツモリ ピノ・ノワール」は、有機栽培のブドウを枝の部分まで漬け込んで発酵させる自然な方法にこだわって醸造。淡い色合いながら、出汁を思わせる繊細で豊かな旨みも感じられるワインです。

創立者・曽我貴彦氏が目指すのは、日本の食や風土になじみ、四季を表現するようなワイン。ワインは農作物であると考え、農家が作れるワインを理想に掲げ、自然な方法を取り入れた、あえて手を掛けないワイン作りに努めています。

ドメーヌミエ・イケノ

山梨県北杜市小淵沢町、八ヶ岳山麓の丘陵地にある「猫の足跡畑」でブドウを栽培する「ドメーヌミエ・イケノ」。池野美映氏が代表を務めるこのドメーヌは、2007年にブドウ栽培を開始し、2011年に醸造所を設立してワイン作りを始めました。

ドメーヌミエ・イケノの畑では、農薬や化学肥料をできるかぎり使わず、雑草も取り除きません。そのため、自然の力で育まれたシャルドネ、ピノ・ノワール、メルローを使ったワインは、八ヶ岳の風土を映しとったかのような、やさしくエレガントな味わいが特徴

ポンプを使わず重力だけで果汁やワインを移動させる新しい技術を取り入れつつ造り上げられたワインは、多くの人々に愛されているのはもちろん、有名レストランやホテルからも人気を集めています。

ドメーヌテッタ

晴れの国・岡山県でワインを醸造する「ドメーヌテッタ」。代表の高橋竜太氏は、新見市哲多町にある耕作放棄地が、ブドウ栽培に適しているといわれる石灰質土壌であることに着目し、2009年にワイン用ブドウの栽培を開始。2016年には醸造所が完成し、ドメーヌテッタがスタートしました。

畑では除草剤と化学肥料を使用せず、薬剤の散布も必要最小限に。さらに、ワイン醸造ではブドウ由来の野生酵母を使用し、酸化防止剤は最少量の添加に努めています。丹精込めて作られたワインは、土地の魅力とブドウ本来の持ち味が引き出された個性的な味わいが特徴です。

高橋竜太氏の目標は、哲多町の土地で育ったブドウのポテンシャルが最大限に発揮されたワイン作り。近年は海外との取引も開始しており、今後より注目を集めるドメーヌになるでしょう。

阪急おすすめのワイン5選

1. キャンティ・クラシコ

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3,080円

「キャンティ・クラシコ」は中部イタリアのトスカーナ州を代表するワイン。サンジョベーゼというブドウ品種主体で造られており、見た目は深く濃いルビー色でフローラルな香りが楽しめます。甘酸っぱくフルーティーな味わい、そしてなめらかなタンニンは、一度飲んだらクセになること間違いなし。

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2. シャブリ クリストフ・パトリス

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3,300円

澄んだイエローの色調が美しい「シャブリ」は、フランス・ブルゴーニュ地方の白ワインです。ミネラル感に、フルーツのフレッシュな風味と酸味が効いた一本で、やわらかなフィニッシュが特徴。辛口ですっきりと飲めるので、前菜・魚介のメインディッシュなどと合わせてお楽しみください。

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3. プピーユ

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5,830円

高級ワインとして知られる「ペトリュス」と、ブラインド・コンテストにて最後まで張り合ったとされる「プピーユ」。フランス・ボルドーのシャトーで栽培された、まろやかな口あたりとしっかりとした渋味が特徴の赤ワインです。やや辛口のテイストは、チョコレートなどのスイーツともよく合うでしょう。

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4. ドメーヌ ジョルジュ リニエ モレ サン ドニ プルミエ クリュ クロ デ ゾルム

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11,000円

"一級畑" を指す「プルミエ・クリュ」のピノ・ノワールを使った、老舗ドメーヌの赤ワイン。香りはラズベリーなどのフルーティーなアロマに、ややスパイス感を感じます。なめらかなタンニンと上品な酸味も感じられる、バランスの美しいワインです。エレガントな味わいは、肉料理によく合いますよ。

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5. リュファン&フィス シャルドネ ドール

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11,000円

大切な日に飲むシャンパンなら「リュファン&フィス シャルドネ ドール」がおすすめ。やや緑を帯びた鮮やかなゴールドの色調と、生き生きとした柑橘を思わせる香りが特徴のシャンパンです。繊細な泡とドライでライトな味わいは、前菜酒・乾杯酒にぴったり。華やかなシーンによく合う一本です。

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ドメーヌは個性あふれるワインを作る小規模生産者

ドメーヌとは、畑を所有してブドウ栽培から醸造、瓶詰めまでおこなうブルゴーニュ地方の小規模生産者です。生産量は多くありませんが、独自性の強いワインを作っています。フランスだけではなく、日本にも信念を持ったドメーヌが多数ありますよ。ドメーヌによるワインを飲む機会に恵まれたときは、作り手の思いを汲み取りながら、その味わいを楽しんでください。

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※商品情報や販売状況は2023年01月26日時点でのものです。
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