節分は「鬼は外!福は内!」と威勢のよい掛け声とともに豆をまいて鬼を追い払い、福を呼び込む行事です。実は、地方や地域によって「鬼は内、福は外」や「鬼は内、福は内」など、さまざまな掛け声があるのをご存じでしょうか。この記事では、地域による掛け声の違いやその由来を解説します。

鬼に豆をまく人

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なぜ「鬼」に豆をまくの?

並んでたつ赤鬼と青鬼

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節分とは、立春の前日に一年の健康や幸運を願う行事です。豆をまいて鬼払いをする行事としておなじみですが、そもそもなぜ、節分で鬼に豆をまくのでしょうか。

その理由は、昔の人々が自然災害や疫病や飢餓などの不幸な出来事の原因を「邪気(鬼)の仕業」ととらえて鬼を恐れていたから。特に季節の変わり目にそのような不幸が起こることが多いという理由から、節分に豆をまき、鬼払いをおこなうようになったといわれています。

節分に豆をまく理由は?掛け声「鬼は外、福は内」の由来は?

節分に豆がまかれるようになった理由には諸説ありますが、日本では古来より「米・麦・ひえ・あわ・豆」の五穀には''穀霊''と呼ばれる精霊が宿るとされていました。鬼を払うのには、そのなかでもっとも粒の大きな「豆」が最適と考えられたようです。

また「魔を滅する(魔滅=まめ)」という言葉にかけて豆を使うようになったという説もあります。

鬼とは「目に見えない邪悪な存在」のたとえです。節分で豆をまく際に掛け声をかけるのには、実体のないものを追い払う意味があると考えられます。

広く使われている「鬼は外、福は内」という掛け声には「災いをもたらす鬼を外に追い出して、福をもたらす福の神を内に呼び込む」という願いが込められています。

鬼を呼び込む地域もある!?地域によって異なる掛け声

ユニークな掛け声や風習には、地域ごとにさまざまな想いが込められています。ここでは、地域によって異なる節分の掛け声をご紹介します。

群馬県藤岡市鬼石地域「鬼は内、福は内」

鬼石(おにし)地域は、その名にちなんで鬼を招き入れる「鬼恋(おにこい)節分祭」をおこなっています。全国で追い出された鬼を招き入れる、鬼にやさしいユニークな行事です。

茨城県つくば市鬼ケ窪「あっちはあっち、こっちはこっち、鬼ヶ窪の年越しだ」

あちこちで追い出されて鬼を気の毒に思い、鬼を呼び寄せる意味のある掛け声です。

紀伊半島「鬼は内、福は内」

昔、紀伊半島や伊勢志摩地域をおさめていた領主が「九鬼(くき)」という名前だったそうです。そのため「鬼」を追い出す掛け声をかけられなかったことが始まりとされています。

宮城県仙台市「福は内福は内、鬼は外鬼は外、天打ち地打ち四方打ち、鬼の目ん玉ぶっつぶせ!」

「鬼を退治する時には、特別な力のある''目''からやっつけるのがよい」との理由から、仙台にはこのような掛け声で豆まきがおこなわれている地域があります。勇ましい掛け声に鬼も驚いてしまいそうですよね。

東京都台東区・浅草寺「千秋万歳 福は内」

「千秋万歳」とは長寿を願う意味で使われる言葉。浅草寺では「観音様の前には鬼はいない」という理由で「鬼は外」とは言わずに「千秋万歳 福は内」という掛け声をかけるそうです。

千葉県成田山・新勝寺「福は内」

千葉県成田山の新勝寺にまつられている不動明王は「鬼さえ改心させる強い力を持っている」といわれることから「鬼は外」は言わず「福は内」だけを唱えます。

京都福知山市「鬼は内、福は外」

福知山市にある大原神社の掛け声は、一般的なものとは真逆の「鬼は内、福は外」。「鬼を神社の内に迎え入れて、改心して福となったものを地域の家に出す」という意味が込められているそうです。

まく豆の種類や食べ物。地域によって異なる節分の風習とは?

丸餅のぜんざい。奥に昆布の佃煮

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豆まきの掛け声以外にも、まく豆の種類や節分で食べる物の風習は、地域によってさまざまな特徴があります。特に節分の食べ物には、その土地ならではの文化や縁起担ぎの想いが反映されています。そこでここからは、地域ごとの風習をご紹介していきます。

地域によって異なる「節分でまく豆」

一般的に節分にまく豆は大豆ですが、北海道や東北・北陸地方などの雪国や、鹿児島県・宮崎県など南九州では、大豆の代わりに落花生をまく地域があります。

その理由には以下のようなものがあります。

<特定の地域が大豆ではなく落花生をまく理由>

大豆より大きく、雪の中でも拾いやすいから
殻つきで衛生的だから
大豆より生産量が多くて安価だから

地域によって異なる「節分の日の食べもの」

豆以外に節分に食べるものといえば、恵方巻きを思い浮かべる方も多いでしょう。実は、恵方巻き以外にも、地域によってさまざまな食べ物を食べる風習があります。

関東地方・けんちん汁

節分にけんちん汁を食べるのは、一部の関東地方の風習のようです。寒い季節の行事の最中に体を温めるために食べていた名残とされています。

関西地方・ぜんざい

関西地方を中心に節分にぜんざいを食べる風習があります。ぜんざいに使われる小豆の赤色が、縁起がよく厄除けの効果があるとされています。

四国地方・こんにゃく

食物繊維が豊富なこんにゃくは、体内の悪いものを排出する効果があるといわれています。四国地方を中心に大晦日や節分に「邪気を払い、身を清める」目的でこんにゃくを食べる「砂おろし」という風習があります。

山口県・くじら

旧暦では新年とされる節分の時期に「大きなものを食べると縁起がよい」という理由から、捕鯨の歴史のある山口県ではくじらを食べる風習があります。「子どもの健やかな成長」を願う意味もあるそうです。

節分の豆まきの正しいやり方を紹介

掛け声やまき方には地域やご家庭によってさまざまな方法がありますが、ここでは一般的な豆まきのやり方をご紹介します。

1. 福豆を準備する

鬼は夜に現れるといわれるため、豆まきは夜におこないます。福豆を準備したら、豆まきの直前まで桝や三法(お供えに使う器)に入れて神棚に供えておきましょう。神棚がない場合は、自分の目線よりも高いところに白い紙を敷いて神棚の代わりにしてください。

2. 豆まきは家族そろって

家族みんなの無病息災を願うために、家族が全員そろってから豆をまきましょう。豆まきは本来は家長の役目ですが「年男・年女」「厄年の人」も吉とされています。

3. 掛け声をかけながら豆をまく

玄関や窓を開けて「鬼は外!」と掛け声をかけながら、鬼を追い出すように奥の部屋から順にまいていきます。

4. 豆の投げ方は「下手投げ」

豆をまく時に桝は胸の辺りで持ちましょう。手のひらが上を向くように「下手(したて)投げ」のように豆をまくのが作法です。

5. 豆をまいたらすぐに鬼を締め出す

奥の部屋から順に玄関まで豆をまき終えたら、すぐに玄関や窓を閉めて鬼を外に締め出しましょう。そのあとに「福は内!」の掛け声と共に、部屋の中に豆をまきます。

6. 最後に豆を食べる

まいた豆を拾ったあとは、一年の無病息災を願いながら、年の数、または年の数に1粒加えた豆を食べましょう。

豆まきで、一年を健やかに過ごしましょう

豆まきは家族みんなでおこなう恒例の行事ですが、地域による掛け声や食べ物の違いなど、意外と知らなかったことも多いのではないでしょうか。

福を呼び込むために「鬼を追い払う」だけでなく「鬼を呼んで福に変える」など、いろいろな意味が込められた掛け声は、由来を知ることでさらに興味がわいてきますね。

※商品情報や販売状況は2022年11月30日時点でのものです。
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